新刊「小説デジタル人民元」

歴史の記述 1 / 历史的记录 之一

歴史の記述 / 历史的记录

 (下面有中文翻译)

 紀伝体と編年体。

 孔子が著したと伝えられる「春秋」や司馬光の「資治通鑑(しじつがん)」は編年体を用いた歴史書の代表作で、歴史を時系列に記述します。一方、司馬遷の「史記」に代表される紀伝体は、帝王の伝記である本紀(ほんぎ)、家臣などの伝記である列伝(れつでん)を中心とし、年表、世系表などの表、社会の重要現象を記す志から構成されます。紀伝体は班固・班昭らによって編纂された「漢書」で完成し、歴代の正史は紀伝体を踏襲します。

 中国のような広大な国土と多様な言語・文化を持つ国家の歴史を後世に伝えようとした場合、編年体の記述では限界があるように思えます(逆に、編年体の限界を突破したのが司馬遷の資治通鑑です。この本は平易に読めるのですが、私のように、ぼっと読んでいるだけでは前後の深い因果関係がわからず、表面的な理解しかできないそうです)。皇帝も、市井の民も、無頼の徒もその時々を生き抜いた歴史の構成員ですが、その事象を多面的に捉えて記述しようとすれば、多様な視点が必要なことは容易に想像できます。

 「小説 デジタル人民元」でも、中国の経済社会を通貨から鳥瞰(ちょうかん)した時、国家が発行する法定通貨(紙幣)を「本紀」の通貨、ビットコインに代表されるデジタル通貨(仮想通貨)を水滸伝の通貨と分類して、二宮真也にこんなことを言わせています。

  古代以来、中国は任侠の士を輩出した。司馬遷は史記で特に遊侠列伝を設けて彼らをたたえた。司馬遷が複眼的に中国の歴史を捉えようとしたら、帝王や諸侯の足跡をたどる本紀だけでは不十分だと考えたんだろう。歴史を動かしたのは彼ら権力者たちだけではない。歴史の舞台裏で黙々と、義を行った人たちもいる。彼らが底流となって中国の歴史を形成した。だから中央権力を記載した本紀だけではなく、もう一つの歴史のベクトルである脱中央集権化の流れを描くため、任侠の世界を描いた遊侠列伝や経済動向を記した貨殖列伝を設けたんだ。ブロックチェーンの脱中心化という思想はまさに、遊侠列伝の世界そのものじゃないか? それはそのまま川劇や水滸伝の世界に受け継がれ、現代でも金庸の作品がベストセラーになる・・・・・・

 そして「ブロックチェーン上で、中央銀行が国家の信用力を背景に通貨を発行するというのはそもそも、論理が破綻している」と、中央政府からデジタル人民元開発の協力を迫られている親友の西行の苦しい立場にも、理解を示します。同時に、同じく主人公の一人で中国企業との提携を模索するみかさ銀行の石埜頭取が、デジタル人民元に警戒感をあらわにする日本の金融担当大臣にこう、訴えます。

  デジタル通貨はブロックチェーン技術を使いインターネット時代に広がった所得格差是正の切り札で、金融包摂により平等社会の実現に貢献するものです。決して侵略者の武器ではありません。逆に、デジタル通貨がそれほど、国際的な発言力の向上に寄与するならなぜ、日本はデジタル円を発行しないのですか?

 ブロックチェーンの平等社会実現の理想と、デジタル独裁の道具となり得る中央銀行デジタル通貨(CDBC)の間の矛盾。 「小説 デジタル人民元」はこの両者になんとか折り合いをつけようとする主人公たちの葛藤を描いていきます。

历史的记述 之一

  纪传体和编年体。

  有传孔子所著的《春秋》和司马光的《资治通鉴》是编年体史书的代表作,按时间顺序记述历史。另外,以司马迁的《史记》为代表的纪传体,以帝王传记的本纪、家臣传记的列传为中心,由记载年表、世系表等为中心的社会重要现象的志向构成。纪传体是由班固、班昭等人编纂的《汉书》完成,历代正史沿袭纪传体。

  像中国这样幅员辽阔、拥有多种语言和文化的国家,如果试图将其历史传承给后代时,编年体的记述似乎是有限的(相反,突破编年体局限性的是司马迁的资治通鉴。这本书虽然浅显易懂,但像我这样只是概略阅读而过,是无法理解前后深刻的因果关系的,只能从表面上肤浅地理解。)皇帝、市井百姓、无赖之徒都是经历他们那个时代的历史成员,如果要尝试从多个角度来分析并描述这些现象,不难想象是需要多种不同的视角。

  即使在小说“数字人民币“中,当从货币的角度来看中国的经济社会时,国家发行的法定货币(纸币)就是“本纪”的货币,而代表数字货币(虚拟货币)的比特币被归类为水浒传的货币,主人公之一二宫真也在小说中说了这样的话。

  古代以来,中国侠义之士辈出。司马迁在史记中专门写了《游侠列传》来赞扬他们。司马迁认为,如果想从多方面捕捉中国历史,光靠追溯帝王和诸侯足迹的《本纪》是远远不够的。推动历史的不仅仅是这些掌权者。也有在历史的幕后默默行义的人们。他们成为暗流,形成了中国的历史。因此,除了记载中央权力的《本纪》以外,为了描绘另一个历史方向——“去中央集权化”的流程,他设立了描写侠义世界的《游侠列传》和记载经济动向的《货殖列传》。区块链的“去中心化”思想,不正是《游侠列传》的世界本身吗?它被原封不动地继承到了川剧和水浒传的世界里,金庸的作品在现代也成了畅销书……

  他也对好友西行在中央政府的压力下合作开发数字人民币的艰难处境表示理解。同时,同样是主角之一,寻求与中国企业合作的三笠银行石埜行长,面对数字人民币表现出警戒态度的日本金融大臣时,也这样呼吁:

  数字货币是利用区块链技术修正在互联网时代扩大的收入差距的王牌,通过普惠金融对实现平等社会做出贡献。绝对不是侵略者的武器。反过来说,数字货币有助于提高国际发言权,为什么日本不发行数字日元呢?

  这是区块链实现平等社会的理想与有可能成为数字独裁工具的中央银行数字货币(CDBC)之间的矛盾。小说“数字人民币”描写的就是主角们想方设法在这两者之间达成妥协的纠葛……。

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