新刊「小説デジタル人民元」

歴史の記述その3 / 历史的记录 之三

歴史の記述 その3

 (下面有中文翻译)

 日本紀など、ただ片ぞばかし。これら(物語)にこそ道々しく、委(くわ)しきことはあらめ     
                      ~紫式部「源氏物語」第二十五帖 蛍~

 それでは歴史書に記載されるにはまだ早い、今とこれからの中国を理解しようとすれば、どうすればよいでしょうか?

 本屋に行けば、中国専門書コーナーにあまたの評論が並べられています。しかし、権威ある専門家の主張は千差万別、どれを手に取ってよいかわからない、という向きも多いのではないでしょうか?何を隠そう、私もその一人です。

 中国語に「瞎子摸象[xiā zǐ mō xiàng]」という言葉があります。数人の盲人が象の一部だけを触って感想を語り合う、つまり自分が知っていると思っていることが実は、事実の一面にすぎない、という例えです。中国のような巨大な対象を前にしては、いわゆる中国専門家の先生方も「瞎子摸象」に陥るリスクは無いかと、私は心配になるのです。しかも、評論の多くは過去を説明するだけで、未来を理解するの座標軸を与えてくれないもどかしさを感じます。特に銀行員時代、「お客様には昨日の中国を語るな、明日の中国を語れ」と、自分に言い聞かせていた私にとっては、、、

 そこで冒頭に書いた紫式部の物語論(光源氏の発言)です。田辺聖子さんの現代語訳によりますと「正史と言われる日本紀などは、ほんの社会の一部分に過ぎず、小説の中にこそ、人間の真実が書き残されている」となります。

 いやあ、紫式部、平安時代の日本女性の知性はすごいですね!編年体の歴史記述形式の弱点を見事についています。しかも当時、世界文明の最先端を行く中国では詩や散文が主流で、小説という形式はほとんど、顧みられませんでした。後進国の日本で、物語の文化を自分が自ら、引っ張ていく、という彼女の気概を感じます。

 源氏物語のこのくだりが大好きな私はデビュー作「連戦連敗」のエピローグで、主人公の江草にこう、語らせています。少し長いですが引用します。

 何を申し上げたいかと言いますと、中国を理解するためには、書店に溢れている評論を読むのも大事ですが、それは紫式部の言うところの「日本紀」と同じ。日中間には経済小説がもっとあっていい。そうすることで、相互理解が更に進むと思うのです。
 私が上海支店におりましたときも、私は、新しく入ってきた中国人スタッフには日本の経済小説を読むように進めていました。日本には優れた経済小説がたくさんありますので、日本理解には一番良いと思いますし、中国にも経済小説が芽生えてきておりますので、両国の相互理解には経済小説が欠かせなくなる時代がくるのではないかと期待しております。ですから今日は私も、経済小説風の講演に挑戦させていただいたというわけです。

 私が経済小説を書く目的を言い切った部分です。今から読み返すと頬が少し、赤くなりますが、初志貫徹。最新作「小説 デジタル人民元」も物語の形式を取りながら、難しいフィンテックの教科書や中国の評論書より何倍も、現場の今を理解頂けるよう書いてみました。
 ぜひご一読いただき、感想などをお聞かせください!

历史的记述 之三  
 
  《日本纪》之类的,只不过是描写历史的一部分而已。只有在这些(小说)才能写出符合道理的详细内容』〜紫式部 “源氏物语” 第二十五帖 萤〜  

 
  在历史书中不可能记载现代和未来发生的事情。那么,我们应该怎样描述现在和未来的中国呢?

  日本的书店里有中国专业书籍区,摆着很多评论。但是,权威专家的论点千差万别,很多人可能都不知道该拿起哪一本好。不瞒你说,我也是其中之一。

  中文里有个词叫“瞎子摸象”。比喻几个盲人只摸了大象的一部分,然后互相交流感想,也就是说,他们认为自己认为的事,其实只是事实的其中一个方面。面对像中国这样庞大的国家,我担心所谓的中国专家老师们会不会陷入“瞎子摸象”的风险。而且,很多评论只是说明过去,却没有给出理解未来的坐标轴,令人郁闷。我在当银行职员时,我经常对自己说:“不要跟客户谈论昨日的中国,要跟客户谈论明日的中国、未来的中国。”

  这就是开头所写的紫式部的物语论(光源氏的话)。根据田边圣子的现代语翻译,“被称为正史的《日本纪》只不过是社会的一部分,只有在小说中,才会留下人类的真实写照”。

  啊,紫式部,平安时代日本女性的知性真了不起啊!!她巧妙地抓住了编年体历史记述形式的弱点。更何况,在当时走在世界文明最前端的中国,诗和散文是主流,几乎看不到小说这种形式。我能感受到她在当时的落后国家日本,她大概是想尝试一下通过写小说来描述历史的真面目吧。

  我非常喜欢《源氏物语》中的这一段,在处女作《连战连败》的结尾,我让主角江草这样说道。虽然有点长,但还是引用一下。  

 我想说的是,为了要了解中国,阅读书店里满满的评论也很重要,但是这和紫式部所说的《日本纪》是一样的。中日之间要是有更多的经济小说就好了。我认为这样我们就可以进一步推进相互理解。
  我在上海分行工作的时候,也会让新进的中国员工阅读日本的经济小说。因为在日本有很多优秀的经济小说,我认为这是了解日本的最佳途径,而且由于经济小说在中国萌芽,我期待着经济小说成为两国相互理解不可或缺的时代到来。这就是为什么今天我也挑战了经济小说式的演讲。
  

  这是我陈述写经济小说目的的部分。现在回想起来,虽然脸有点红,但我贯彻了初衷。我的最新作品《小说数字人民币》也是以故事的形式写成的,比艰涩难懂的金融技术教科书和中国的评论书更能让读者理解该领域的现状。
  感谢您的阅读!

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